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気候変動とエネルギー
IGESワーキングペーパー

カーボン・バジェット・アプローチの下での
日本の中長期GHG排出経路

2014年9月25日
  • 明日香 壽川 (東北大学)
  • 倉持 壮(地球環境戦略研究機関 (IGES))
  • Hanna Fekete (Ecofys Germany)
  • 田村 堅太郎 (地球環境戦略研究機関(IGES))
  • Niklas Höhne (Ecofys Germany)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告における重要なメッセージの一つは、地球温暖化を一定のレベルに抑制する場合に許容される温室効果ガス(GHG)の排出総量(カーボン・バジェット)の存在です。私たちは、地球温暖化を産業革命前に比べて2℃未満に抑えるという2度目標の確実な達成に必要な世界全体でのカーボン・バジェット(1990年~2100年でCO2換算1兆8000億トン)の下、IPCC報告書にある公平性指標および排出削減努力の分担方法を用いた場合の日本のカーボン・バジェット及び2030年および2050年でのGHG排出量を明らかにしました。

主な結果

 日本の1990年~2100年のカーボン・バジェットは、IPCC報告書にある「一人あたりGHG排出量収斂」をベースにした努力分担方法を用いると510億~540億トン(CO2換算、以下同じ)となります(土地利用・土地利用変化・林業を除く)。これは、日本がすでに2013年時点で、カーボン・バジェットという日本に与えられた「予算」のそれぞれ57%~61%をすでに使っていることを意味します。また、日本のGHG排出が現状と同量で推移した場合、2030年頃までには残されたカーボン・バジェットをすべて使い切ることになります。

 日本に残されたカーボン・バジェットは、日本政府が掲げているGHG排出の2020年目標(90年比3.1%増)と2050年目標(90年比80%削減)を直線で結んだ場合の2013年以降の累積排出量(390億トン)の50~60%に相当します。これは、2℃目標達成および公平性を考慮して求めた日本のカーボン・バジェットと、現行の2020年・2050年削減目標の下での累積排出量との間に相当量のギャップがあることを示しています。

 「一人あたりGHG排出量の収斂」をベースとした努力分担方法を用いて2014年から日本がGHG排出削減を開始するシナリオでは、日本の2030年の排出量は1990年比でそれぞれ54%削減および66%削減となります。

 現在の日本政府の2020年目標を経て、2050年80%削減目標を達成する場合の2020年から2050年の間の年間平均排出削減量は、日本の排出量をカーボン・バジェットの枠内に収めるために2014年から即時に削減行動を取った場合に必要な年間平均排出削減量とほぼ同じです。これは、現行の2020年目標を維持するよりも、より厳しい目標値を設定して2020年以降の排出削減率を緩めた方がより合理性が高いことを意味します。

 排出削減の先延ばしは、カーボン・ロックイン(GHG排出の固定化)を招き、将来の選択肢を限定します。例えば、現在日本において建設が計画されている新規火力発電所(11.4ギガワット)がすべて石炭火力発電となると仮定すると、40年間の稼働年数の間に排出するGHG総量は27億トンに上り、これは日本に残されたカーボン・バジェットの12~14%を占めます。

 2014年8月時点で運転再開の申請が行われている13発電所の原子炉19基が再稼働した場合、回避される総CO2排出量は試算されたカーボン・バジェットの7~8%程度になります。また、2030年時点での19基の再稼働によるCO2排出回避量は、1990年の日本のCO2排出量の約5%に相当します。(運転期間40年、設備利用率70%を想定)

 本稿は、日本国内では十分に議論されてこなかった2℃目標達成との整合性や公平性という点に焦点を当てています。これまで、日本の削減目標を検討する際、限界排出削減コストの均等化といった考え方が中心となっていました。しかし、最新のIPCC 報告書などでは、この考え方は効率性の概念とされ、公平性の概念とは区別されています。本稿で示したカーボン・バジェットとそれに関連する長期排出経路は、今後、日本の削減目標を策定および評価する際に参照されるものになると思われます。

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