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Climate Updates

非経済的ロス&ダメージへの対処:
気候変動と災害に強い社会の構築に向けて

2015年5月20日

干ばつ、洪水、熱波、海面上昇を含む様々な悪影響が気候変動に関連していると広く認識されている。これらの悪影響を緩和するための温室効果ガス排出削減策や気候変動への適応策を実施した場合においても、避けられない悪影響(「ロス&ダメージ」あるいは「損失と被害」と呼ばれる)が生じることが指摘されており、研究や開発への取り組みを通じてそのようなロス&ダメージに対処する必要があるとの国際社会の合意がなされている。適応策とロス&ダメージへの対処には密接な関係があり、ロス&ダメージへの対処を適応策に統合的に位置付けて包括的に実施することで、気候変動に起因する悪影響に効果的に対処することが可能となる。これまでロス&ダメージに関しては経済的な観点からのみ議論されてきたが、健康被害や文化的価値の損失など非経済的なロス&ダメージの重要性が明らかになりつつある。IGESではこの問題に着目し、東南アジア地域の共同研究者とともに、非経済的ロス&ダメージへの対処に注目した新規プロジェクトを立ち上げた。

非経済的なロス&ダメージとして、例えば、歴史的価値を持つ文化遺産の損失や生物多様性・生態系サービスの損失など、高い社会的価値を持ちながらほとんど市場価値のないものについて、定量的評価が難しいことが大きな課題となっている。IGESにより実施されている研究では、調査を実施した国において、災害後、非経済的ロス&ダメージに関してはほとんど測定・報告されていないことが示唆された。経済的なロス&ダメージのみを対象としてしまうと、高い社会的価値を持つ非経済的なロス&ダメージに対処できず、補償システムに穴が開いてしまう。この問題に対処するために、定量的評価の難しさを克服し、何らかの形で非経済的ロス&ダメージを測定することが求められている。

さらに、非経済的ロス&ダメージの特性は土地柄や地域性により異なる可能性があることから、その特性を鑑みた地方政府による一時的評価は必要不可欠であり、また、中央政府は、地方政府がその評価を実施する上での統一的ガイドラインを示す必要があるだろう。したがって、現在見落とされている重要な非経済的ロス&ダメージに関するデータを、地方レベルでのデータ収集フォーマットや、国家・準国家レベルでのデータ保管システムに盛り込むための大幅な改訂が必要となる。また、国家レベルでの保険や他のリスク管理ツールに関するガイドラインについても改訂が必要となる。生物多様性・生態系サービス、社会科学及び関連分野において実施されている定性的な分析や経済的定量化は、非経済的ロス&ダメージを評価する上で役立つツールを提供しうるだろう。

主要な非経済的ロス&ダメージの把握及び対策実施による成果の把握を容易にする簡易ツールやフォーマットは、意思決定における大きな変革をもたらすことが期待される。主要な非経済的ロス&ダメージの特定、優先順位付け及び定量化に関する事例を開拓していくと共に、利害関係者との密接な連携を通じ、地方・準国家・国家のすべてのレベルでの意思決定において非経済的ロス&ダメージを反映することが望ましい。IGESは、これら成果の実現に向け、インドやバングラデシュ、フィリピン、タイのパートナー機関との連携を通じ、非経済的ロス&ダメージの評価や対策の立案・実施に資する研究を行っている。非経済的ロス&ダメージへの適切な対処は、気候変動と災害に強い社会の構築に少なからず貢献するものと考える。

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