ご覧のページは旧ウェブサイトのアーカイブです。
最新の情報は新しいIGESのウェブサイト (https://www.iges.or.jp/jp)をご覧ください。

You are viewing an archive, visit the current website for the latest information.


IGES HLPF:The High-level Political Forum on Sustainable Development

IGES SDGs: Online Voluntary Local Review (VLR) Lab

IGES SDGs: Online Voluntary Local Review (VLR) Lab

APSFD 2019記念対談
灰色のまちから緑のまち・SDGsモデル都市へ
~北九州市梅本副市長とIGES武内理事長の見る持続可能な開発~

2019年3月28日

APFSDについて

2019年3月27日から29日にかけて、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)主催の「第6回 持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム」(APFSD)が、タイ・バンコクにある国連会議場にて開催され、各国政府高官を含め1,000名近くが出席しました。

APFSDは、毎年7月にニューヨークの国連本部で行われる世界の全地域を対象とした「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)に向けて、アジア太平洋地域のSDGsの取り組み状況を把握・推進することを目的としています。

2019年のHLPF及びAPFSDは、「人々のエンパワーメントおよび、包括性と平等の確保」をテーマに、SDGsのゴールのうち、4(教育)、8(働きがいと経済成長)、10(不平等是正)、13(気候変動)、16(平和と公正)、17(パートナーシップ)の進捗をレビューしました。また、各国が国連のガイドラインに沿って自国のSDGsの進捗を報告する「自発的国家レビュー」(VNR)に加え、その自治体版ともいえる「自発的自治体レビュー」(VLR)についても取り上げられました。

北九州市は、昨年、世界に先駆けて公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)と共著でVLRにあたる「北九州市持続可能な開発目標(SDGs)レポート2018」を作成・発表し、大きな話題となりました。それを受けて、3月28日、VNRとVLRをテーマとしたAPFSDの本会議にて、北九州市の梅本和秀副市長がその経験を共有し、参加者からは拍手とともに大きな反響を得ました。

この本会議の後、梅本副市長はVLRのパートナーであるIGES武内和彦理事長と対談を行いました。進行はIGES都市タスクフォース藤野純一プログラムディレクター、記録は北九州アーバンセンターの大田純子研究員です。

対談概要

藤野: 梅本副市長、本会議の「セッション4:自主的国家レビュー」およびその直後の公式サイドイベント、大変にお疲れ様でした。まず、武内理事長から、梅本副市長がご発表された意義をどう捉えているか教えてください。

武内: 世界中がSDGsのローカリゼーション(国際的なテーマを地域に取り込むこと)の重要性を認識していますが、まだ本格的に行っている地域は少ないのが現状です。そのような中、北九州市が国連の本会議で発表を行ったのは、非常にインパクトがありますね。

梅本: 北九州市のSDGsの取り組みを国内だけでなく、IGESのご支援のもと、VLRという新しい手法を使って、昨年の国連本部でのハイレベル政治フォーラムに続き、今回のアジア太平洋地域の国連のメインフォーラムで世界に発信できました。私たち北九州市にとっても、とても大きなことです。

武内: 北九州市は公害を克服した技術や経験を、国際協力として移転していることでも知られています。SDGsの時代に入り、これまでよりさらにスコープを広げて、環境以外の様々な問題にも取り組んでいることを示せたのではないでしょうか。

梅本: SDGsの17のゴールと169のターゲットには環境以外の分野も含まれていますので、取り組みをきっかけに北九州市の視野も広がっているところです。市長をトップとする推進体制や有識者などによる「北九州市SDGs協議会」の設立、企業などへの普及を目指した「北九州SDGsクラブ」も創設しました。市民にもフィードバックしていきたいですね。

武内: MDGs(ミレニアム開発目標)は、途上国のみを対象に、貧困削減や食糧危機などを半減させることを目標にしていました。一方、SDGsは先進国も含めたすべての国と人を対象に、気候変動などの地球規模の課題や先進国での社会的な課題も視野に入れた、いわばバージョンアップ版です。少子高齢化など、まだSDGsで十分には言及されていないことも、日本が世界に対して発信すべきです。例えば、北九州市では、人口減少によりCO2排出量も減少することが想定されるとき、排出量削減を喜ぶべきか、人口減少を悲しむべきか判断に困るという話が出たと聞いたことがあります。これは、単純にCO2削減さえできれば良いわけではなく、多面的に問題を解決する必要があることを示唆しています。SDGsは国連気候変動枠組条約の方向性も広げたのです。

藤野: SDGsを活用する意義について、北九州市ではどのように捉えていますか?

梅本: SDGsはどの地方自治体にとってもマスタープランそのものなので、北九州市以外の自治体でもどう扱うべきか、戸惑いを感じることもあるでしょう。ただ、世界共通のものさしや目標をもとに、国内外の自治体が同じ土俵で議論し、自分たちの立ち位置や伸びしろが多面的に可視化されることは、新しいと感じています。

藤野: 北九州市はSDGsが採択される前から、日本政府の「環境モデル都市」や「環境未来都市」の選定を受けて、持続可能な発展に向けた実践をしてこられました。それらの蓄積に基づいた「SDGs未来都市」の提案書作成や「北九州市環境基本計画」へのSDGsの取り込みなどが、北九州市のSDGsの取り組み状況をまとめたVLRレポート作成にちょうどフィットしました。一方、IGESは今回のAPFSDに際し、自治体のVLRレポート作成を支援するプラットフォーム「VLR Lab」を立ち上げました。こちらを使って、フロントランナーとしての北九州市の知見を国内外の自治体に共有いただき、北九州市の後に続く自治体を増やしていくことができれば幸いです。

梅本: 先日、ODAに関する参議院の特別委員会に参考人として出席しました。その際、もっぱら北九州市のSDGsへの取り組みを他の自治体にいかに広げられるかに関して意見を求められました。こちらからは、特別なことをしているわけではなく、国際協力に加えて、自分たちの本質的な課題に対して総合的な視点から取り組んでいることをお伝えしました。

藤野: IGESなどの研究機関や大学などへの期待はございますか? IGESは北九州アーバンセンターを構えており、市の取り組みをグローバルに発信するお手伝いはできるかと考えております。また、北九州市立大学なども、中立的な立場で貢献できることがありそうです。

武内: これまでは、異なるステークホルダーが異なる言語を使って活動していましたが、SDGsという共通言語のもとで、いかに実際の連携を進めていくかが課題になっていくでしょう。北九州市でも、企業と市の立場は必ずしも同じではないはずです。これらのステークホルダーが一体となって具体的な行動に踏み出せば、本当に強大な力を持つ可能性を秘めていると言えそうです。

梅本: まさにそのとおりです。行政、企業、市民団体は同じ方向を見ているようでゴールが違うこともあります。研究機関などは中立的な立場が比較的取りやすく、大学などのステークホルダーも独自の指標づくりなどの取り組みを始めています。IGESとも、このような指標づくりやモニタリング、報告手法の検討などにおいて連携し、より精度の高いデータや情報を用いた効果的な報告ができると良いかと考えています。

大田: そのような連携ができたら素晴らしいですね。本日の本会合でもデータの質は議論されていました。VNRやVLRに関しても、初回は取り組み自体や計画について多くの時間が当てられましたが、2回目のVNRを提出する国々も出てきて、現在はいかに進捗を測り、世界全体で比較していくかに関心が移行しつつあります。

武内: パリ協定とSDGsが全会一致で採択されたことにも関連していますね。両方とも押し付けでなく、自主的な取り組みであることが本質的な共通点です。京都議定書の「共通だが差異のある責任」は、パリ協定やSDGsでは消えました。ただし、自主的であるからこそ、結果を客観的にモニタリングする必要があります。パリ協定では、実施指針であるルールブックも採択され、野心をさらに高めるシステムができました。SDGsも同様に、指標に従って達成状況を検証する必要があるものの、まだその域には至っていません。現在のSDGsに含まれていない課題や指標もあるので、定められている17のゴール、169のターゲット、232の指標をバイブルのように聖域化するのではなく、適宜新たなものを打ち出していけたらと考えています。

梅本: ターゲットに対する自分たちの位置を測る意味で、指標がきわめて重要だと実感しています。今後、高齢化などの指標も検討しなければならないとあらためて認識しました。

武内: 私は以前から北九州市に関わっていますが、経済成長と環境保全を両立した、いわゆる環境クズネッツ曲線の実践都市として強い印象を持っています。私が小学生だったときには、社会科の教科書に公害時代の北九州市の写真とともに工場の煙が成長のシンボルであったことが記載されていましたが、現在では、環境モデル都市SDGsモデル都市となった対比が興味深いです。

梅本: 私も子どものころ、工場の煙を誇りにしていたことを覚えています。一方で、健康への影響に対する懸念を背景に、地域の母親たちが「青空が欲しい」運動を自主的に始めた結果、行政や企業も動きました。なぜ行動するのか、行動の背景にある理由への理解が得られれば、他のステークホルダーも賛同するのです。今年1月、日本経済新聞が自治体を対象に持続可能なまちづくり(SDGs先進度)について調査したところ、北九州市は社会面で全国1位、総合で2位の評価を得ました。まさに「市民力」の賜物です。これからも、市民、企業、大学・研究機関などの多様なステークホルダーと一体となって持続可能な開発の実現に尽力していきたいと思います。

(一同) 本日は誠にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

Go to top of page