ご覧のページは旧ウェブサイトのアーカイブです。
最新の情報は新しいIGESのウェブサイト (https://www.iges.or.jp/jp)をご覧ください。

You are viewing an archive, visit the current website for the latest information.




APFSD2019

IGES HLPF:The High-level Political Forum on Sustainable Development

IGES SDGs: Online Voluntary Local Review (VLR) Lab

IGES SDGs: Online Voluntary Local Review (VLR) Lab
ブリーフィングノート「気候変動適応と持続可能な開発に向けた統合」

概要
  • 生態系を基盤とするアプローチやランドスケープアプローチといった土地管理の統合的アプローチは、持続可能なインフラおよび生物多様性の持続可能な利用と保全と併用することで、複数の利点をもたらす。自然資本を維持することの重要性を強調すると同時に、土地と天然資源の利害相反に取り組むための手段を利害関係者に提供することによって、開発、気候変動適応、および防災に対する国際目標に貢献できる大きな可能性が統合的アプローチにはある。統合的アプローチ、持続可能なインフラ、ならびに生物多様性の持続可能な利用および保全は、アジア太平洋諸国がSDGを達成するための重要な戦略である。
  • 統合は、さまざまな地理的スケールおよびタイムスケールにおいて必要となる。国レベルでの適応戦略の開発に焦点が当てられてきたが、ますます相互に関連し合う世界において、国境をまたぐ気候変動リスクに対処するための国境を越えたレベルでの開発と適応計画の統合は、地域の優先事項とされるべきである。


  • 前書

    国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、世界の繁栄と平和を達成するための包括的かつ普遍的な行動を呼びかけている。気候変動は繁栄と平和の脅威となるため、SDGsに気候行動が含まれている(SDGs目標 13)。気候行動が他のSDGsに貢献したり、またその逆を保証するには、計画や行動を考案する際にステークホルダーがSDGに取り組むプロセスとなる統合的アプローチが必要となる。SDGsは不可分と理解されているため(UN, 2015a)、その実現には統合的アプローチが不可欠である。国レベルでは適応計画に焦点が当てられているが、国境を越えたレベルにおいても、統合的アプローチによって支持された適応が必要となる。


    背景

    適応はSDGsに組み込まれており、気候行動関連のSDGs目標13には、(1)気候変動に起因する危険や自然災害に対するレジリエンスおよび適応力の強化、(2)気候変動対策の国別の政策および計画への統合、(3)災害リスクへの対処の必要性に対する、人々や機関の教育と意識向上のための制度の強化、(4)緩和と適応の取組への資金動員と、後発開発途上国(LDC)、小島嶼開発途上国(SIDS)、および他の社会的弱者グループの能力を高めるためのメカニズムの強化、が含まれている。

    SDGsが採択されてからというもの、目標13下のターゲットを達成するための手段の開発は、進展がほとんど見られていない。進展の大部分は、国内適応計画の形成や、これら目標の達成に向けた優先事項の特定に限られている。例えば、第2回国連環境総会(UNEA)(2016年5月)では、SDGs全般を達成するための重要な手段は、多様なステークホルダーとの協調と科学政策のインターフェースであるとしている(UNEP, 2016a)。さらに本総会では、適応関連の取組について相乗効果の強化と重複の回避のため、UNEPと他の国連機関との協力強化を決議している(UNEP、2016b)。最近(2019年3月)締結された第4回UNEAでは、気候変動の適応および緩和の利益と、自然災害に対するレジリエンスを達成するための分野として、持続可能な生態系の再生、生物多様性、土地の劣化を特定した。

    進展とSDGsの統合的アプローチへの依存から、いくつかの見解が可能である。

    気候変動の適応と緩和の相乗効果による環境行動が促進されつつある。目標13の進展とUNEAによる決定は、目標13を達成するための焦点が、仙台防災枠組(UNISDR, 2015)とパリ協定(UN, 2015b)の下で実施されている国内イニシアチブにあることを示している。目標13がSDGsの気候変動問題に対してアンカーポイントを提供する一方、SDGsの枠組みの下での気候変動適応関連の取り組みに対するUNEAの支援は、気候変動の適応と緩和の相乗効果がある環境行動を焦点としている。これは、UNEAのセッションが、生物多様性と持続可能なインフラの促進にあることでも判断できる。

    適応の進展は、制度的および技術的能力と調整の限界により遅い。アジア太平洋諸国の多くで、気候の脅威に対する国レベルの対応として、国家適応計画(NAP)の準備作業が始められている。アジア太平洋地域の発展途上国のうち、スリランカとフィジーのみが国家適応計画を提出しており、他の国々は完成段階にある(UNFCCC, 2019)。国家適応計画の進展は、発展途上国の技術的および制度的能力が限られていることと、それらを策定するのに必要な制度的調整が欠如しているため、遅れている(UNFCCC, 2018)。

    気候行動に向けた国の資金は、国家予算、国連気候変動枠組条約下の適応基金、国際金融機関、二国間資金、および民間部門の資金が動員されている。この支援の一部は、緑の気候基金の準備プログラムを通じて、UNFCCCの下、適応計画に充てられる。国際金融機関は、2017年の総気候変動資金の21%(74億米ドル)を占め、気候変動適応資金の最大の財源である(EBRD, 2018)。現在利用可能な適応資金は十分ではなく、非常に断片化されているほか、利用しにくいものとなっている。さらに、提案書作成における複雑な手続きおよび技術的な性質により、利用可能な資金を利用する能力が国によって制限されている(EBRD, 2018)。

    持続可能な開発と適応のための統合的アプローチ:統合的アプローチは複数の利益をもたらす可能性があり、単一の目標または狭い一連の目標が採用された場合に生じる不必要なトレードオフを回避することができる。土地管理への統合的アプローチは、何百万ヘクタールもの土地が劣化し過剰利用されているアジア太平洋地域において、SDGを達成するために特に重要である。土地管理への統合的アプローチには、生態系アプローチ(CBD, 2004)とランドスケープアプローチ(Scheyvens et al, 2017)がある。これら2つのアプローチは、土地管理の枠組みと目的に合意するために、土地に異なる利害関係を持つステークホルダーのためのプロセスを持つことの重要性を強調している。 これはSDGsにとって、例えば経済成長と生物多様性保全に関連する潜在的に相反する目標を調整するためのプロセスがあることを意味する。これらのアプローチの下では、生物多様性の保全と回復力のあるインフラの両方を促進することができ、気候変動の緩和、適応、開発および防災において利益をもたらす。

    生態系を基盤としたアプローチはまた、特に適応と防災に適用することができ(Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice, CBD[生物多様性条約科学技術助言補助機関], 2018)、複数のSDGに貢献する可能性がある。一部の国では、これらのアプローチを農業、インフラ、林業の各セクターに採用するための前提条件がすでに整っている。

    テレコネクション(遠隔相関)に対応するには、国境を越えた人間の移動や自然生態系、貿易および金融投資においてより大規模な統合も必要だ。地域的および世界的な経済の統合が進むにつれ、各国とも国土とかけ離れた気候変動の影響を大きく受けるようになる(Prabhakar et al, 2018)。一国における開発や適応の行動は、他国の適応能力にプラスまたはマイナスの影響を与える可能性がある。例えば、食料輸出国が土地生産性を維持するために適応行動を採択し、その食料を輸入する国々に利益をもたらす場合、国境を越えた利益が生じると考えられる。逆に、ある国が適応した結果として、他の国も流れる河川からの取水量が増えると、越境コストが発生する可能性がある。テレコネクションに関連した国境を越えた気候変動リスクの認識の欠如は、気候変動に対する世界的な脆弱性の純増をもたらす。


    結論

    SDGsに必要不可欠な統合的アプローチ:生態系アプローチとランドスケープアプローチは、利害関係者の関心を自然資本の維持に向けさせる一方で、土地に対する利害関係を検討するためのプロセスも提供する。そのようなプロセスがなければ、土地利用は、少なくとも土地が生産的である限り、他のSDGsを犠牲にして、経済成長に関連するSDGsに貢献する可能性が高い。適応と防災への生態系を基盤とするアプローチも、多くのSDGsに貢献することができる。これらの理由から、SDGsの枠組みとUNEAの下でのイニシアチブは、生態系アプローチやランドスケープアプローチのような統合的アプローチを推進し続けることが期待できる。

    持続可能な開発に対する国境を越えた気候変動リスクを認識し、それに対処することが重要である。現在のUNEA、UNFCCCや様々な地域および国のメカニズムのもとでの議論は統合的アプローチの一般的な重要性を認識しているものの、国境を越えた気候変動のリスクに対応するために、より計画や行動の統合を行う必要がある。一部の、国境を越えた水資源を管理するための様々なイニシアチブにおいては進捗が見られる。これらの事例は、人の移動、貿易、投資などの分野における越境気候変動リスクに対処するためのアイデアを提供する可能性がある。



    • References:
    • EBRD (2018) Joint report on multilateral banks climate finance. London, UK: European Bank for Reconstruction and Development.
    • Kliot, N. D. Shmueli and U. Shamir (2001) Institutions for management of transboundary water resources: their nature, characteristics and shortcomings, Water Policy, 3(3), pp. 229-255. https://doi.org/10.1016/S1366-7017(01)00008-3.
    • Prabhakar, S.V.R.K., B.R. Shivakoti, and A.F. Corral (2018) Transboundary Impacts of Climate Change in Asia: Making a Case for Regional Adaptation Planning and Cooperation. Hayama, Japan: Institute for Global Environmental Strategies.
    • Scheyvens, H., R. Shaw, I. Endo, J. Kawasaki, P. Ngoc Bao, B.R. Shivakoti, H. Samejima, B.K. Mitra, and Y. Takahashi (2017) “Promoting the Landscape Approach in Asia-Pacific Developing Countries: Key Concepts and Ways Forward.” 37. Policy Brief. Hayama. doi:10.1177/0022146513479002.
    • Secretariat of the Convention on Biological Diversity (2004) The Ecosystem Approach, (CBD Guidelines) Montreal: Secretariat of the Convention on Biological Diversity.
    • Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice, CBD (2018). Voluntary guidelines for the design and effective Implementation of ecosystem-based approaches to climate change adaptation and disaster risk reduction. CBD/SBSTTA/22/INF/1, 22 June 2018
    • UN (2015a) “Transforming Our World: The 2030 Agenda for Sustainable Development.” https://Sustainabledevelopment.Un.Org/Content/Documents/7891Transforming%20Our%20World. Pdf. doi:10.1007/s13398-014-0173-7.2.
    • UN (2015b) “Paris Agreement.” 21st Conference of the Parties. doi:FCCC/CP/2015/L.9. https://www4.unfccc.int/sites/NAPC/Pages/national-adaptation-plans.aspx
    • UNEP (2016a) Delivering on the 2030 agenda for sustainable development. Nairobi, Kenya: UNEP. Available at http://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/11180/K1607143_UNEPEA2_RES5E.pdf
    • UNEP (2016b) Supporting the Paris Agreement. Nairobi, Kenya: UNEP. Available at http://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/11181/K1607155_UNEPEA2_RES6E.pdf
    • UNEP (2019) Ministerial Declaration, Resolutions and Decisions for UNEA 4. Nairobi, Kenya: UNEP. Available at http://web.unep.org/environmentassembly/ministerial-declaration-resolutions-and-decisions-unea-4.
    • UNFCCC (2018) Progress, experience, best practices, lessons learned, gaps, needs and support provided and received in the process to formulate and implement national adaptation plans. Available at <https://unfccc.int/sites/default/files/resource/inf01.pdf.
    • UNFCCC (2019) National Adaptation Plans from developing countries. UNFCCC: Bonn, Germany.
    • UNISDR (2015) Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030. Geneva: UNISDR.

    「APFSD 2019」TOPページへ戻る